| |
| 執筆講演 > 福田聖次の論文 > 区画整理フォーラム2000 |
[区画整理フォーラム2000 発表論文]
1.はじめに(1)街の構成要素街は大きく分けて、ハードとしては土地区画整理事業(以下、区画整理という)で言うところの公共用地と宅地で構成されている。これに、ソフト的視点を加えると、その中間領域として建物のファサ−ドや垣柵といった、公民の境界領域である半公共空間が考えられる。 これら公共・半公共・宅地の各空間を形造る要素として、道路や建物といった様々な施設があるのであり、街が物理的に構成されている。 (2)計画的まちづくりこの物理的に構成された街が、住み易い或いは美しい街であるか否かはまた、別の要素によるのであり、それはハード的には計画的市街地整備であり、ソフト的には計画的に都市整備を誘導したり秩序を定める都市計画ということになる。 この都市計画には更に、具体的なまちづくりのルールとして地区計画があり、計画的に造られた街であれば保全、計画的な街にしたければ誘導といったまちづくりのルールを地区の実状に合わせて定めることになる。 (3)協働のまちづくり物的な計画的街づくりとしての市街地整備には、実績からみて区画整理がその代表と言えよう。そして、この区画整理は一般的には将来の住民ともなる複数の地権者がおり、彼らが正に街づくりの主体であることは、その事業の仕組みからいって明らかである。 となれば、街づくりは区画整理事業の施行者や業務代行を行うデベロッパー或いは行政まかせではなく、新たな移住者を含む地権者即ち住民との協働によるべきものである。 その協働の街づくりを考えた場合、ここでも様々な要素があるが、そのルールを集約した結果としての地区計画がまず第一に挙げられるから、本稿は街づくりのツール、或いはルーツとしての地区計画について、協働の街づくりの視点から区画整理における地区計画のありかたについて述べるものとする。 2.区画整理における地区計画の現状と問題点(1)区画整理における地区計画の位置付け@都市計画から見た区画整理における地区計画制度都市計画の観点から地区計画を評価する場合、住民参加による地区の特性に応じたきめ細かい計画の策定と、弾力的な規制による地区の整備誘導・保全手法と位置付けられる。 従って、住民参加によるのであるから地方分権一括法や、今年度改正された都市計画法以前から、その都市計画決定主体は基礎自治体である市町村とされている。 このため、従来市町村が定める都市計画は、全て都道府県知事の承認が必要とされてきたが、地区計画に関しては、道路(地区施設)や一定の建築物に関する事項についてのみ知事の承認を要するとされた。(都市計画法19条2項、同政令14条の2) さて、ここで、この”住民参加による”と”知事の承認”に注目していただきたい。後に述べるがこのことが、実務上地区計画の決定・運用を難しくしていたのである。 A事業環境から見た区画整理における地区計画制度の位置付け区画整理“事業”の観点から地区計画を評価する場合、事業を推進する(しなければならない)実務の立場では、 (2)区画整理に於ける地区計画の今日的問題点と課題以上、地区計画の位置づけを踏まえて、区画整理に於ける地区計画の今日的問題点と課題について考えた場合、次の点が挙げられる。 @住民の合意形成プロセスの地域格差現行法制度の下では、地区計画を定める場合の手続きとして、都市計画法(以下、法という)16条第2項に基づきいわゆる条例縦覧を行い、利害関係を有する者の意見を求めることとされている。 このこと自体は元々法17条で都市計画の案の縦覧が規定されており、法律としては当然の流れではあるが、住民の合意形成に当たってきた実務経験から言えば、“住民参加による”を標榜するには、少々事務的過ぎるきらいがあるのも事実である。 であるからこそ、実際の地区計画の都市計画決定手続きでは、法16条に基づく縦覧に先立ち住民説明会を行うことが多く、行政の担当者や事業(代行)者はいかに住民の理解を得て、意見書の提出を無くせしむるかに関心が注がれるのである。 ところが、これら説明会等は任意の行為であるから、統一された規定も無く、説明のレベルは地域によって千差万別である。先に述べたように、住民の合意形成手続きとしては16条の規定のみであるため、どのようなレベルで合意形成を図ろうとも、都市計画決定されれば結果オーライとなる。 したがって、充分に住民説明を行い議論するか、法16条だけの手続きで済ませるかは行政担当者の自信と度胸次第となり、当の街づくりの主体たる住民の理解度はかなり地域格差が生じることになるから、これは法の平等の精神からは問題であろう。 A既定都市計画としての重みと時代の変化への対応の矛盾時代の変化と共に区画整理の事業環境は大きく変化しており、当初想定した土地利用と需要がかい離している例は少なくない。 このため、事業推進上やむにやまれず地区計画の変更要求が起こるが、本来計画的市街地整備を行うものであるから、土地の需要にあわせて都市計画としての土地利用の規制誘導策を変えるのであれば地区計画など不要ということになる。 一方で地区計画は、”住民参加による”街づくりルールであるから、本音はどうであれ主体の住民が変えたいので有れば変えるべきである。ここで、将来を見据えた毅然たる都市行政のあり方とその計画の柔軟性という相反する要求が問題となるのである。 B決定時と変更時の住民格差区画整理事業では、地区計画の決定時はその利害関係者は基本的に区画整理事業の地権者であるから、この時点では予定される人口はまだ張り付いてはいない。 何らかの事由でこの地区計画を変更しようとした場合、当然に地区計画ありきで幾多の新住民がそこに住み、決定時の地権者とは利害関係者の構成が大きく変わっている。 となれば、マンションの立て替えが困難であるように、大きく膨れ上がった住民の合意形成は至難の業と言えよう。 C県からの一律な規制の要求地区計画を定めようとした場合、その実務のなかで必ずと言って良いほど直面する問題に、最小宅地規模の規制などへの、県からの一律的な規制の要求がある。 地区計画は市町村決定であるから判で押したような規制の要求をするのであれば、都市計画 以上これらの問題点・課題の解決策を考えると、都市計画としての大義名分と現実との調整が浮き彫りになる。その1つとして協働の街づくりについて、住民参加による地区計画決定・変更について、実際例をまじえて次に述べる。 3.協働による地区計画の変更先に述べたように、地区計画は法定都市計画の一つであり、決定においては公明正大に、且つ変更は事業の都合でむやみに行うべきものではないが、住民参加の街づくりルールとしては、規制を押しつけられるものでもなければ、時代に合わなくなった既決事項に縛られ続ける必要もない。都市行政としては、誰もが納得する大義名分があれば、認めざるを得ないし、あえて否定する理由もないはずである。 では、何が納得する理由であろうか。それは地区計画の目的から”住民参加による”理由であることは明確であろう。街づくりの主体である住民(利害関係者)の総意であれば、それが地域エゴでない限り、地域の問題であるから何人たりとも反論は出来ないはずである。 その実例として神奈川県下で私が関わった2つの例を以下に示す。 (1)神奈川県横須賀市吉井池田土地区画整理事業に係る地区計画の変更
これは本来的に理由になるべくもない。ところで現実の街と人々の生活を見ると、戸建て 住宅地南側の高台に高層住宅地が計画され、明らかに住環境にプラスとは思えない。 そこで住民の方々はこの計画に納得しているかと確認したところ、住民組織による高層住 宅反対の意見と要望がまとまっているというのである。 ならば、既に住民の地区計画変更要望の合意形成は成されているのであるからこのことを 理由とし、更に街の醸成が進み明確に緑地も確定してきたので、これらを地区施設や樹林池草地等で担保するなど、所有者の意向を確認した上で規制強化すべきものは強化した。 この結果、県との協議は1回で結審し、4ヶ月後の昨年12月には地区計画変更が告示さ れた。 (2)神奈川県香川・下寺尾土地区画整理事業に係る地区計画の決定
文字通り住民の手による地区整備計画案を作成、このプロセスを全て記録し、県との協議 に当たった。
4.おわりにおわりに住民協働の実務にたずさわる立場から、地区計画に係る今後の都市行政の課題とあり方について述べたい。 住民の街づくり組織を設け、地元行政と協働による街づくりの一環として地区計画策定にたずさわってきたが、そのなかで感心させられるのは地元市町村の行政担当者は地域の実情を良く理解し、時に休日返上で文字通り住民と協働していることである。 また、事例としてあげた神奈川県下だけではなく他の多くの地域でも同様に、住民も決して私利私欲に走ったり、勝手な要求をすることは一度として無かった。 このように、地元においては行政と住民は決して対立するものではなく、良い街並みを創りたいという点では互いに一致しているものである。 ところが、住民が自ら定めた街づくりのルールを法定都市計画として地区計画に定めようとした場合、さきに述べた”知事の承認”のための県との協議において、時に無理難題とも思える要求に出くわすことが少なからずある。 住民参加の街づくりと言うのであれば、少なくとも地元行政と住民が検討した街づくりのルールについては、何より地元の実状と特性にあったものであるとの認識を上級官庁は持った上で指導すべきである。そして、地元の考えに納得がいかなければ、何故なのかその根拠を明確にしなければならない。 また、地区計画の決定や変更については、充分に住民の中で納得いくまで検討すべきである。 例えば「宅地周りは生け垣または透過性のあるフェンスとする」等である。策定者はそれなりの見識があっての事であろうが、“道路に面する”が抜けている。実際の住み手からすれば、外から見えない隣地境界は個人の領域であり、ここまで規制されてはたまったものではない。 庭木がそだつまでは端から端まで全ての家の庭や洗濯物が見通せるのである。 最低敷地規模にしても、相続の問題も考えて論議すべきである。現状では、仮換地に必要であるからと決定を急ぎ過ぎるようである。これは用途地域指定の条件とされていることに問題が有ると言えよう。 先年ドイツ・カールスルーエ市の都市計画局の担当者と同大学の都市計画教授をまじえてBプラン策定プロセスについて聞く機会があったが、彼地では住民の充分な議論を経、それでも決まらない場合、代表者による議会で議決し、5年以上かけることも少なくないとのこと、その代わり納得して決めたことは絶対に守るという。 協働の街づくりとはこういうことでは無いだろうか。 |
| Copyright (c) 2002-2003 EUR CO.,LTD. All Rights Reserved. 当サイトで使用している写真および、テキストの無断転載を禁止します |